医療保険は「公的医療保険」と「民間の医療保険」の2つに分けられます。
2つの医療保険は給付の仕組みや対象が異なるため、特徴をきちんと理解した上で加入する医療保険を選ぶことをおすすめします。
本記事では、医療保険の給付について以下のポイントを解説します。
- 給付金と保険金の違い
- 公的医療保険(健康保険)の主な給付制度
- 民間の医療保険の主な給付手当
- 医療保険の給付対象になるケース
民間の医療保険を契約する前に、給付対象となる条件を事前に確認しておきましょう。
給付金とは?保険金との違い
医療保険の「給付金」は、入院や手術など所定の要件を満たした際に受け取れるお金のことです。
保険契約が継続する中で受け取ることができ、給付金を受け取っても保険契約は終了しません。
一方の「保険金」は、生命保険などで死亡または満期を迎えたときに受け取れるお金のことです。
死亡・満期のタイミングで保険金を受け取ると保険契約は終了します。
給付金と保険金は似たような意味で用いられますが、少し意味が異なるため注意が必要です。
公的医療保険(健康保険)の主な給付制度
公的医療保険(健康保険)では、以下の2つの給付制度があります。
- 現物給付
- 現金給付
それぞれの給付の内容を確認していきましょう。
現物給付
現物給付は医療行為そのものが給付される仕組みです。
公的医療保険(健康保険)では、診療や検査、手術、入院、投薬など、病気やケガの治療に必要な医療が給付されます。
さらに医療機関の窓口で保険証を提示すれば、自己負担額は医療費全体の1〜3割で済みます。
一定額の支払いのみで治療に必要な医療が現物給付される仕組みになっています。
現金給付
公的医療保険は現物給付が基本ですが、場合によっては現金が支給されるケースもあります。
現金が支給されるケースは、主に以下の通りです。
- 子どもを出産したとき(出産手当一時金)
- 業務外のケガや病気で働けないとき(傷病手当金)
- 被保険者やその家族が死亡したとき(埋葬料)
上記のようなケースに該当する場合、現物給付ではなく現金が支給されます。
民間の医療保険の主な給付手当
民間の医療保険では、主に以下のような給付手当が支給されます。
- 通院給付金
- 入院給付金
- 手術給付金
- 女性疾病入院給付金
- 先進医療給付金
それぞれの給付手当の内容を解説していきます。
通院給付金
通院給付金とは、入院後一定期間以内に通院した場合に支給される給付金のことです。
設定された「通院給付金日額」に通院日数を掛けて算出された金額が支給されます。
近年、医療の進化によって入院日数は短期化しており、すぐに退院して通院治療に切り替えるケースは少なくありません。
そのため、通院給付金の重要性も高まってきています。
ただし、通院給付金は「入院後の通院」を給付対象としている医療保険がほとんどです。
「風邪などで通院しただけ」など、入院を伴わない通院の場合は支給されないケースが多いため注意しましょう。
入院給付金
入院給付金とは、ケガや病気で入院した際に支給される給付金です。
設定された「入院給付金日額」に入院日数を掛けて算出された金額が支給されます。
公的医療保険では治療にかかる自己負担費用を3割に抑えられるものの、入院中の差額ベッド代やお見舞いに来る家族の交通費などは支給されません。
民間の医療保険は入院給付金が基本保障として備えられるため、入院中にかかる費用もカバー可能です。
ただし、医療保険によって1入院ごとの支払限度日数が60日・120日・180日などと定められています。
また、商品によっては「入院4日目までは支給されない」という免責期間が設けられている場合もあります。
あらかじめ、入院給付金の支払い条件を確認しておきましょう。
手術給付金
手術給付金とは、保険会社が定める所定の手術を行なった場合に受け取れる給付金のことです。
入院給付金日額に10倍・20倍などの倍率を掛けて算出されるケースや、一律で「◯万円」と定められているケースがあります。
手術給付金の給付対象となるのは、以下のいずれかに該当する手術です。
- 公的医療保険の対象となる約1,000種の手術
- 保険会社が約款で定める88種の手術
加入する商品によって対象となる手術が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
女性疾病入院給付金
女性疾病入院給付金とは、女性特有の病気の治療を目的として入院した場合に支給される給付金です。
特約を契約することで保障されるケースが多いですが、女性向けの医療保険として基本の保障内容に設定されている場合もあります。
主に以下のような病気が女性疾病入院給付金の給付対象となります。
- 子宮がん
- 乳がん
- 甲状腺の疾患
- 帝王切開・早産・流産
女性にとって心配な病気をしっかりとカバーできるため安心です。
ただし、保険会社によって対象となる病気が異なる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
先進医療給付金
先進医療給付金とは、厚生労働大臣が認める「先進医療」に該当する治療を受けた場合に支給される給付金です。
一般的には特約で保障されるケースが多いですが、場合によっては基本保障に設定されている場合もあります。
先進医療は通常の治療とは異なり、公的医療保険の対象とはなりません。
高度な技術を要する分、技術料も数十万円〜数百万円になりますが、すべて自己負担になってしまいます。
しかし、民間の医療保険で先進医療給付金を備えていれば高額な技術料も給付されます。
金銭面での心配をせずに、安心して先進医療を受けることが可能です。
高額な治療費がかかる先進医療に備えておきたい場合は、先進医療給付金に関する特約を活用しましょう。
対象になる人とならない人、その違いは?保険別に比較
ここまで公的医療保険と民間の医療保険の給付について解説してきましたが、いずれも給付の対象になるケースとならないケースが存在します。
給付対象になるための条件を把握しておかないと、いざというときに給付金が受け取れずに困る可能性もあります。
ここでは、公的医療保険と民間の医療保険で給付対象になる条件を解説します。
公的医療保険の条件
公的医療保険は、基本的に「業務外のケガや病気」の場合に給付されます
業務中・通勤途中のケガや病気の場合は、労災保険から現物給付を受けることになります。
また、ケガや病気の治療とみなされないものは保障の対象となりません。
例えば自然分娩や美容整形、健康診断、予防注射などは給付対象外となるため注意が必要です。
民間の医療保険の場合
民間の医療保険は、「ケガや病気で入院・手術をした人」が支給対象となります。
ケガや病気の治療を受ける場合には基本的に給付金を受け取ることができます。
ただし加入時の審査に通過できない場合は、支給の対象になりません。
民間の医療保険では、加入時に現在の健康状態を保険会社に伝える「告知」が必要となり、保険会社は告知内容をもとに審査を行います。
健康状態に問題があると判断された場合には、加入できずに支給の対象外となってしまう可能性があるため注意が必要です。
「引受基準緩和型」「無選択型」を視野に入れる
通常の医療保険に加入できない場合は「引受基準緩和型」や「無選択型」の保険を視野に入れましょう。
告知項目が少なかったり、加入時の告知が不要だったりするため、通常の医療保険に加入できない人でも契約できる可能性があります。
ただし引受基準緩和型や無選択型は保険料が割高となり、家計に負担をかけるケースが少なくありません。
保険料の負担を考慮した上で、保険に加入すべきかどうか判断しましょう。
まとめ:請求しそびれないよう対象者条件を把握しておこう
公的医療保険と民間の医療保険は、それぞれ給付の内容が異なります。
自分にとって必要な保障内容を確認し、必要な給付を受けられるように保険プランを設計することが大切です。
また公的医療保険・民間の医療保険では、給付対象になるケースとならないケースがあります。
確実に給付を受け取るためにも、支給対象となる条件をきちんと把握しておきましょう。